クリームパンより、アンパンが好き!

どうも、あすも院長です。

新型コロナウィルス感染が日本各地でも蔓延を見せているようです。安倍首相の要請のもと、昨日(3/2)から全国の小中高で一斉に臨時の春休みに入ったということだそうです。(島根県や愛知県などは通常どおり登校させるとの報道もありますが)政府も本格的に感染防止の対策をとることになったようです。

各企業に対しても「テレワーク」や「在宅勤務」の実施を要請しているようですが、密閉された満員電車の中こそ、ウィルスの温床であり感染源になりうるわけで効果的な対策だと思います。それにしても、ネット環境が整った現代においてはテレワークや在宅勤務でなんとかなるなら、普段からわざわざ会社出勤せずにネットで会議をやったほうが時間短縮、労力も無駄にせず、より効率的な気がします。AI化がますます進むこれからはそういう時代になっていくのだと思います。

「濃厚接触」だとか「コロナ」だとか「パンデミック」だとか、今年も序盤から流行語大賞エントリー候補が続出中ですが、なかなか笑える状況でもありませんね。冗談抜きにして自らが流行感染しないように心がけたいものです。

さて、そんな新型コロナウィルスにビクビクしながら毎日を過ごしておりますが、今回は感染症にまつわる図書を紹介します。

著書:『感染症の世界史』
著者: 石 弘之

本書は2014年に書かれたものを加筆修正加えたものを2018年に文庫化されたものです。

序章(エボラ出血熱とデング熱)の話から、第一部、第二部、第三部で構成されており、細かく14のトピックを設けて様々な感染症の歴史について書かれています。感染症の歴史的全容を抑えるにはとても良い一冊だと思います。ぜひおすすめいたします!

以下は各章のメインテーマ(本書どおりではなく簡単にまとめてます)

【第一部】20万年の地球環境史と感染症
第1章 人類と病気の軍拡競争の歴史(菌やウイルス、耐性、人類進化など)
第2章 環境変化が招く感染症(マラリヤやコレラなど)
第3章 人類の移動と病気の拡散(ペストやSARSなど)

【第二部】人類と共存するウイルスと細菌
第4章 ピロリ菌と胃がん
第5章 寄生虫
第6章 セックスとガン(HPV)
第7章 ヘルペスウイルス
第8章 インフルエンザ
第9章 エイズ

【第三部】日本列島史と感染症の現状
第10章 ハシカ(日本が世界にハシカを撒き散らしているという話)
第11章 風疹
第12章 成人T細胞白血病
第13章 結核
 終章  今後、感染症との激戦が予想される地域 → 中国とアフリカ

内容的には盛り沢山で、1度に全部をレビューするのは困難なので、今回は新型コロナウイルスのことも踏まえて、感染症流行に関わる内容をピックアップしていきたいと思い、第1章、第3章、第8章、終章の4つについて触れていきたいと思います。他章は別の機会に提供できればと思います。

第一章

◉第1章のポイント
ヒトと感染症(菌・ウイルス)の関係は、ヒトが環境を変えたことによって大きく変わってきた。特に人口の急増と過密化が感染症の急増に拍車をかけている。

2013年のアメリカ疾病予防センター(CDC)によれば、米国内で毎年200万人以上が複数の抗生物質に耐性を持つ細菌に感染し、少なくとも23000人が死亡している。また WHO(世界保健機構)は2014年に、抗生物質の乱用で耐性菌が急増していることを警告。肺炎や淋病、尿路感染症、敗血症などの原因になる7種類の主な細菌が抗生物質に耐性をもち効かなくなっているという。私たちも聞き覚えのあるMRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)は病院内や高齢者施設での集団感染がよくニュースで報じられたりするが、メチシリン自体はペニシリンに耐性を持つ菌が現れたために、代わるものとして開発された抗生物質である。しかし実用化された数年後には耐性菌が出現しているのである。

このような背景には畜産や養殖の現場などでも、抗生物質や抗ウイルス剤を含む飼料が使われていることが原因ともされている。1996年に大阪で発生した病原性大腸菌O-157も、乳牛の乳房炎の予防のために、えさに抗生物質が添加されていたことが原因とみられている。WHOが1997年に抗生物質の飼料添加の禁止を勧告したが、EUは禁止したものの、日本・中国・米国などは依然として飼料添加を続けているということだそうだ。

また抗生物質による水質汚染も記しておくと、例えばインフルエンザの時に処方されるタミフル。日本は全世界で使用されるタミフルの70%を占めると言われている。ある研究によれば、下水処理場で分析したところ、処理後の下水や河川からタミフルの代謝物が検出されたという。従来の汚水処理技術ではタミフルを完全除去できないということがわかり、つまりタミフルがトイレから下水処理場をすり抜けて河川に入り込み、それを水鳥が水中のタミフルと接触することで、体内にタミフルに対する抵抗力のあるウイルスを生む可能性があるという指摘がされている。

第三章

◉第3章のポイント
中国と西アジア・地中海沿岸地方を結んだシルクロードは、東から絹・漆器・紙などが、西からは宝石・ガラス製品・金銀細工・絨毯などが主に交易の品であったが、同時に西から東へは「天然痘」や「ハシカ」、東から西へは「ペスト」を大流行させる結果となった。
21世紀の今日では、移動手段が徒歩や馬から、船、鉄道、自動車、飛行機へと発達するにつれて、迅速かつ大規模な人と物の移動ができるようになった。これに乗じてSARSやナイル熱などの病原体も短時間で遠距離に運ばれる。そして、密集した都市で暮らすようになった人間たちは、感染するに絶好の条件を自ずと整えたということになる。

著者は、SARSは交通の発達がもたらした感染症としている。SARS(重症急性呼吸器症候群)は2002年11月に中国広東省深セン市で最初の患者が確認された。当時、経済ブームにわくこの都市には地方から多くの若者が出稼ぎのために集まっていた。

広東省では、野生動物の肉、つまり「野味」を食べる習慣が根付いており、「野味市場」にはヘビ、トカゲ、サル、アザラシ、イタチ、ネズミ、センザンコウなどさまざまな生きた動物やその肉が売られている。野味市場や野味を提供する料理店で働いている出稼ぎの若者に、野生動物からウイルスが感染したと考えられる。発病すると、高熱、咳、呼吸困難などの症状を訴え、衰弱して死んでいく。(原文抜粋)

SARSの病原体は「新型のコロナウイルス」であることが判明されて、「SARSウイルス」と命名されたが、2003年3月12日にWHOが世界規模の警報を出した時には、すでに広東省、山西省からトロント、シンガポール、ハノイ、香港、台湾まで流行が広がっていた。収束した2003年9月までに、世界30カ国で8098人の感染者、774人の死亡が確定された。(WHOによる)

元の自然宿主は野味市場で売られていたハクビシンが疑われたが、コロナウイルスが分離されたキクガシラコウモリが震源とみられている。しかしながら、すでに知られていたどのコロナウイルスとも遺伝子構造が異なる新種のものであった。

また2012年暮れから2013年5月にかけて中東(サウジアラビア、カタール、チュニジアなど)で流行した MERS(中東呼吸器症候群)も、SARSとよく似た呼吸器の病気であるが、新型コロナウイルスによるものであった。WHOによれば、2014年10月までに21か国で855人の感染が確認され、333人が死亡した。(死亡率ほぼ4割)

第八章

◉第8章のポイント
空気感染で広がるインフルエンザウイルスは、人口密度の高い「都市」に適応したウイルスであるということ。また農地転換や開発により、世界の湿地の50%が失われたことでカモなど水禽類(すいきんるい)の越冬地が過密化され、また通年の耕作により餌場が縮小されることにより、カモのウイルス感染の機会がかなり増えたということ。

インフルエンザは本来、シベリア、アラスカ、カナダなどの北極圏の近くで、凍りついた湖や沼の中に存在する。春になると渡り鳥(カモやガンなど)の水鳥が繁殖のために戻ってくるとウイルスが水鳥の体内に潜り込み、腸管で増殖。渡り鳥が繁殖地と越冬地の移動の途中で、通過するところにウイルス付きの糞を撒き散らす。かつて南極圏では確認されていなかったインフルエンザウイルスだが、2014年5月に鳥インフルエンザの新型が南極のアンデリーペンギンの糞と血液から発見された。そのためインフルエンザ空白地帯はこの地球上からなくなったことになる。

インフルエンザウイルスは長年の共生している、もともと宿主であるカモなどを発病させることはないが、カモから家畜化されたアヒルは容易に感染する。感染を繰り返すうちに、遺伝子を変異させて、鶏など他の動物でも増殖可能なものに変異していった。

人への感染には豚が重要な仲介をする。

豚の呼吸器の上皮細胞には、人のインフルエンザウイルスも含めて多くの亜型ウイルスが感染できる。ここで水鳥の持つ亜型ウイルスとの間で遺伝子の組み換えが起きると、人に感染できる亜型が生まれる。豚は新亜型インフルエンザの「製造工場」になっている。(原文抜粋)

そして、なぜ鳥のウイルスが豚に感染するか?という答えが、「中国南部」にあると著者は指摘する。中国南部の農家ではアヒルやガチョウが豚と一緒に飼われていて、庭先にある池で網を張って鶏を飼い、池では食用の淡水魚と一緒にアヒルやガチョウが落ちてくる鶏の糞を餌にするという。豚も放し飼いでその周りをうろついている状態だという。過去100年間のインフルエンザの世界流行の多くは、中国南部が起源とされる理由はそういうことらしい。

インフルエンザの分類説明(参考までに、興味のある方だけ読んでください)
インフルエンザウイルスの表面には、2種類のトゲ状のたんぱく質が存在。
①HA(ヘマグルチニン)・・・ウイルス膜方面上にある突起状のたんぱく質。宿主の細胞に付着する時に使われる。
②NA(ノイラミニダーゼ)・・・ウイルスが別の細胞に乗り移る時に必要とされる。ウイルスはHA(H)、NA(N)を1つずつ持ち、理論的に170種類の亜型ウイルスがあるという。
1919年 スペインかぜ  H1N1亜型
1957年 アジアかぜ   H2N2亜型
1968年 香港かぜ    H3N2亜型
1977年 ソ連かぜ    H1N1亜型
 *かぜと呼んでいるが、インフルエンザである。
2013年3月 鳥インフルエンザ(中国南部)H7N9亜型
2013年12月 鳥インフルエンザ(江西省) H10N8亜型
2014年5月 鳥インフルエンザ(四川省) H5N6亜型

「インフルエンザ」その名の由来
1504年にイタリアで名付けられた。冬に流行して春に収束することから、当時天体や寒気の影響によるものと考えられイタリア語で「影響」を意味する インフルエンツァ(influenza)と呼んだ。1743年に英訳され、インフルエンザとして世界的に使われるようになった。

さらに古くは、紀元前412年、古代ギリシャのヒポクラテスが書き残した病気の内容からもインフルエンザの流行を示唆するものがあるという。

14〜15世紀ルネッサンス期イタリア
1580年 パンデミックだと推測される。アジアから始まり、アフリカ大陸、ヨーロッパへ広がった。当時のローマで8000人以上が死亡したとされる。その後、ヨーロッパから新大陸へ広がった。

18〜19世紀。世界で25回の大流行があったとされる。(パンデミック12回)
1729年 春ロシアから始まり、6ヶ月でヨーロッパ全土へ。3年間に渡り、第1波・第2波・第3波と進むに連れて死亡率が高まったと言われ、人類の1/3が感染したと言われている。
1781年〜1782年 中国に始まり、ロシアを経て、10ヶ月後にヨーロッパへ。
1830年〜1833年 中国に始まり、フィリピン、インドネシア、インド、ロシアさらにはヨーロッパへ飲み込むほど。1847年ロンドン流行で25万人の死者。
1886年〜1890年 「ロシアかぜ」トルキスタンに始まり、ヨーロッパ全域へ。20万〜25万人が死亡。

20世紀以降
1918年〜1919年 「スペインかぜ」当時世界人口約18億人。少なくともその半数〜1/3が感染し、死亡率は地域により10〜20%、世界人口の3〜5%が死亡したと推定される。死者数8000万人とされる。
1957年 「アジアかぜ」世界で100万人以上が死亡。日本では約300万人感染うち約5700人死亡。
1968年〜1969年 「香港かぜ」香港で6週間で約50万人が感染。死者全世界で100万人以上。米国で83800人死亡。日本で14万人感染うち約2000人死亡。
1977年〜1978年 「ソ連かぜ」旧ソ連で流行。約10万人が死亡。研究所に保存されていたウイルスが、何らかの理由で流出したことが原因とされている。
2009年 「豚インフルエンザ」メキシコと米国で発生。CDCのまとめでは、世界199か国で感染者6100万人・死者18000人を超え、日本の死者203人(原因確定できないものも含む)一方、2013年にジョージ・ワシントン大学教授らの専門家チームの発表では、約12万3000人〜20万3000人が死亡し、インフルエンザにより弱って死亡した関連死を含めると40万人以上とされる。

インフルエンザ大流行の背景には、先に述べた「人口の密集」であったり、「環境の変化」などが挙げられるが、著者は「畜産革命」もその一因としている。

最近では農家の庭先で買う小規模養鶏から、数万羽から数十万羽もまとめて飼う工場式養鶏が急激に普及してきた。世界最大の養鶏工場といわれるブラジル南東部のマンディケイラ農場は、800万羽を飼育、1日540万個の卵を生産している。自然光や外気がほとんど入らない閉鎖式の鶏舎で、身動きできないほど多数の鶏を狭いゲージに詰め込む。
鶏は、遺伝子組換えトウモロコシのえさを与えられ、むりやり太らされる。40〜60日間飼われるとベルトコンベアーで運ばれ、機械で自動的に食肉処理される。以前は80日程度かかっていたが、成長促進の薬剤投与でこれだけ短縮された。ファーストフード用やスーパーの安いブロイラーは、もはや大量生産でコストを競う「工業製品」である。
豚の飼育現場も鶏と変わらない。豚も世界で約8億頭が飼われ、その60%までが中国産だ。最初にメキシコで出現した「豚インフルエンザ」は、進出してきた米国の大手養豚会社が経営する巨大養豚場が、発生源だったとみられている。ここで年間100万頭近い豚が生産され、その高密度飼育と不潔さで悪名高い養豚場である。(本文抜粋)

終章

今後、感染症との激戦が予想される地域は?というタイトルに対し、著者は「感染症の巣窟になりうる」国として、「中国」と「アフリカ」をあげている。

中国においては、13億4000万の人口が国内外に盛んに動き回ること。さらに春節の時期には、国内を3億人が旅行し周り、年間のべ1億人が海外に出かけるという。これらの移動が感染を広げる根本となっているようだ。

それにつけても、中国国内の防疫体制は遅れており、慢性的に大気汚染や水質汚染の悪化から、ヒトの呼吸器が弱り病原体が体内に侵入しやすくなっていて、水からの感染の危険性も高いとされる。

衛生管理のずさんさも挙げている。以下箇条書き

2003年 各国で禁止される DDTが中国茶や漬物から検出される
2004年 安徽省(アンキショウ)で製造された偽粉ミルクで乳児が死亡。
2004年 湖北省などで理髪店から回収された人毛から抽出されたアミノ酸で作る「人毛醤油」を日本など海外に輸出される
2007年 有害物質の添加されたペットフード、練り歯磨き、塗料に鉛を含むおもちゃなど。日本では冷凍ぎょうざで10人が中毒症状を訴える。北京では露店の肉まんに段ボールが混入
2010年 下水の汚水で精製した「地溝油」(ちこうゆ)が食用油として中国全土の飲食店で使われていた
2013年 有名ハンバーガーチェーン店で、長期にわたって病死した鶏が食材に使われていたことが発覚。米国では中国から輸入したペットフードで、犬猫約600匹死ぬ事件発生
2014年 上海の食品加工会社が品質保証期間の過ぎた古い鶏肉を大手ファーストフード店に出荷していた事件。一部は日本のファーストフード店にも出荷されていた

著者は、事例を挙げるに留めています。

いずれにせよ、著者は終わりに、世界の高齢化に触れ、感染症がますますの脅威になるとしている。そして「地上で最も進化した人間」vs「もっとも原始的な微生物」の死闘は今後もつづくことだろうと締めくくっている。

あすも院長の感想
改めて読み直し、現在流行中の「新型コロナウイルス」について考えてみると、これは起こるべくして起きた事象なのだろう。著者:石弘之氏へインタビューした記事(カドブン)があるので是非読んでみて欲しいのですが、「人類の歴史は20万年だが、微生物は40億年生き抜いてきた強者だ」という言葉に妙に納得せざるをえない。本書の「まえがき」の項ですでに著者は「微生物は、地上最強の地位に登り詰めた人類にとってほぼ唯一の天敵でもある」と述べている。まさにその通りなのだと思う。
私自身、去年の夏に虫に刺され、得体の知れぬ(培養検査でも不明のまま)ウイルス・菌に侵され4日間高熱が下がらず入院するに至った経緯があり、今まで以上に感染症がより身近に感じるようになった。なので、今回の新型コロナウイルスの大流行には、人一倍敏感になっている節もあるのだけど、結局ウイルスや菌に入り込まれたら闘うのは自分の体でしかないので、そこを強くして守るしかないのだと思う。
うまく薬剤で対処できれば良いが、まだワクチンや治療薬などの対処法の目処も立たない状況であるし、そもそも抵抗力がなければそれすらも無意味に終わる可能性が高いわけで。。。
そういう意味では、地道に免疫力アップにつとめ、危険な場所には近づかないという作戦しか今はないのだろうし、今後も現れ続ける新型のウイルスへの対抗手段としても同じことが言えるのだと思う。

外出先から戻ったら、まず手洗いを徹底しましょう!!

あすもはりきゅう整骨院(品川駅より徒歩5分)